こんにちはチャックです。
突然ですがあなたにとって不条理とはなんですか?
人生を生きていく上で不条理とは避けれません。
そしてその不条理に抗うも太刀打ちできない無力感に襲われることもあります。
しかしそんな世の中でも自分らしくありのままを生きたい
そう思うのであればこの本を是非読んでください。
とはいえ決して前向きな物語ではないのでご了承ください。
異邦人:アルベール・カミュ
作品の説明
私ははじめて、世界の優しい無関心に、心をひらいた。
太陽の眩しさを理由にアラビア人を殺し、死刑判決を受けたのちも幸福であると確信する主人公ムルソー。不条理をテーマにした、著者の代表作。
通常の論理的な一貫性が失われている男ムルソーを主人公に、理性や人間性の不合理を追求したカミュの代表作。
それではこの作品のあらすじと解説(ネタバレ)をしていきます。
あらすじ
母の死の翌日海水浴に行き、女と関係を結び、映画をみて笑いころげ、友人の女出入りに関係して人を殺害し、動機について「太陽のせい」と答える。判決は死刑であったが、自分は幸福であると確信し、処刑の日に大勢の見物人が憎悪の叫びをあげて迎えてくれることだけを望む。
主要登場人物
ムルソー
マリイ・カルドナ
レエモン・サンテス
判事
この作品の見どころ
143ページと短めなのでサクッと読めますが内容は結構ダークです
裁判中の判事とのやり取りで見られるムルソーの感情は共感できるようなものではないが何故か心に刺さるものがあります。
なぜ殺人を犯したのかという判事の問いに対しての答えはあまりにも有名です。
そしてそう述べるしかなかったムルソーの心境は僕達に答えのない無力感を感じさせてきます。
作品要約(ネタバレ)
仕事中の主人公ムルソーに母が亡くなったとの電報が入る。
ムルソーは休暇をとって母がいた養老院へ行く。
ムルソーは母の葬儀だというのに涙も流さず
タバコを吸ったり、うたた寝をしたりする。
母が死んだことを受け入れるとそれ以上の感情は湧き上がってこない。
母の恋人は悲しんでいる。
「だけどこれは俺のせいではない。」
そして葬儀の翌日ムルソーは海へ遊びに行く
そこで以前の仕事仲間マリイと再開する。
ムルソーはマリイと海水浴を楽しんだ。
海水浴の後は映画に行く。
ムルソーは先日母が亡くなったばかりなのに
笑い転げて楽しんだ。
そしてその晩、ムルソーはマリイと共に過ごす。
ある日仕事終え、帰宅すると隣に住んでいるレエモンの話を聞く。
どうやらアラブ人の愛人が働きもせず自分を騙し金を無駄に使っているとのこと。
その女を懲らしめ方をムルソーに相談する。
そしてムルソーもそれに提案する。
後日レエモンの部屋から女性の悲鳴が響き渡る。
これが後の事件の引き金になる。
数日後、ムルソーはレエモンに誘われて海辺での友人との集まりにマリイと参加する。
その時にレエモンの友人マソンを紹介される。
ムルソー、レエモン、マソンの三人で海岸を歩いていると二人のアラブ人が向かってきた。
そこでアラブ人と揉め事になりレエモンは怪我をする。
レエモンはピストルを所持していて撃とうとしていたので阻止するためにピストルを預かる。
揉め事も収まりムルソーはみんなと別行動を取り
一人で海岸を歩いている。
その時に先程のアラブ人の一人に出くわす
アラブ人が刃物を出してくる。
そこでムルソーはピストルの引き金を引いてしまう。
アラブ人はそこで死亡する。
ムルソーはそこにさらに四発撃ち込んだ。
ムルソーは逮捕され、独房へ入る。
しかしムルソーは不幸だとは思わなかった。
そして裁判が始まった。
母の葬儀なのに冷静でいられたこと、翌日に海水浴に行った事、女性と帰りに喜劇映画を見て情事に至ったこと、レエモンの悪巧みに下端したこと、こうしたことからムルソーは死刑を言い渡される。
死刑執行の前日牧師がムルソーのもとに訪れ
神を信じないというムルソーに祈ろうとすると
ムルソーは牧師を掴み罵詈雑言を浴びせる。
牧師が帰り、時間が経ち落ち着きを取り戻したムルソーは
世界の優しい無関心に心を開き、幸福を感じる。
ムルソーが最後に望んだのは
私の処刑の日に大勢の見物人が憎悪を叫び、私を迎えることだけだった。
著書の難解部分
この作品の難しいところはムルソーに共感できるかどうかではなく
ムルソーが誰とも共感できない世界にどうやって幸福を見出したかがポイントだと僕は思う。
この作品はサイコパス野郎の人生哲学だなんて片付けられてしまうこともあるが
作者のカミュはキリスト教圏の中で無神論者として生きていた。地域差もあったとは思うがキリスト教徒は無神論者を差別する傾向にあったとか。
世界情勢の荒れてる時代をフランスで過ごしたカミュならではの思想がこの本には込められてます。
カミュは他にもマルクスの主義などあらゆる主義や思想に反発しました。不器用ながらもカミュは自分を偽るこなく周りから差別を受けてもありのままでいることを最上としていました。
そういった背景をこの作品にうまく落とし込んでいるのです。
著書の特徴
カミュは後にノーベル文学賞を受賞しますが、きっかけはこの作品だと述べる人も多いです。
この作品の持つ不条理さは同じ不条理小説で有名なフランツ・カフカの”変身”とは違うダークさを持っています。
また言い回しなども”ママン”など味のある独特さを持っている。
作者の情報
フランスの小説家、劇作家、哲学者。1913年フランス領(当時)アルジェリア生まれ。フランス人入植者の父が幼時に戦死、不自由な子供時代を送る。高等中学の師の影響で文学に目覚める。アルジェ大学卒業後、新聞記者となり、第2次大戦時は反戦記事を書いて活躍。アマチュア劇団の活動にも情熱を注ぐ。1942年発表した小説『異邦人』やエッセイ『シーシュポスの神話』が絶賛され、「不条理」の哲学者として注目される。その後、『ペスト』『カリギュラ』等で作家としての地位を固めるが、1951年『反抗的人間』をめぐりサルトルと論争、決別する。以降、重度の結核と闘いながら、『転落』等を発表。1957年ノーベル文学賞を受賞。1960年執筆先の別荘からパリの自宅に戻る途中、自動車事故により46歳という若さで急逝
漫画版 ペストより引用
作品の評価
面白さ
僕の好きな小説TOP5入り!非常面白く海外文学に慣れてない方にも十分に楽しめる作品です
読みやすさ
難しい単語などはなく比較的読みやすい
予備知識
なくても十分に楽しめます。当時の時代背景やフランス文学、宗教観の予習を簡単にさらうとストーリーだけでなくカミュの思想をより一層深く感じれます。
感想
僕はこの本を読んでカミュから見るあらゆる主義への反発、世から孤立し社会を放棄しても自分を見失わない主人公の心境や価値観に一つの美徳を感じました。
この作品を読むメリット
徹底的な不条理を疑似体験できる。
この作品を読むデメリット
不条理小説が故、後味は決して良くない。
以上、【異邦人】要約、解説でした。
”きょう、ママンが死んだ。もしかすると、昨日かも知れないが、私にはわからない。”
異邦人 アルベール・カミュ
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